奥津温泉文学散歩

    歌に惹かれて
 ネットで出会った「日本の古本屋」
(http://www.kosho.or.jp/servlet/bookselect.Kihon)に出会い
「歌集 太陽の愛」を見つけて入手しました。
 この歌集は、昭和15年7月31日印刷
         昭和15年8月5日発行
 定価 金壹圓七拾銭
 著述者
 東京市目黒區清水町四七五 岡野直七郎
 発行者 
 京都市左京區下鴨泉川町六 中市 弘
 印刷者
 京都市下京區北小路通新町西 須磨勘兵衛
 発行所
 東京市銀座三-四
           甲島書林


 時代を感じさせてくれる歌集です
この歌集の偶成(66ページ)に歌碑の歌が載っていました。

人物伝 へのリンク (赤磐市の広報誌から)

岡野直七郎

 岡山県赤磐市出身の歌人
 大正15年「蒼穹」を創刊主宰
 「谷川」「太陽の愛」など多くの歌集を残す

歌集 花を尋ねて 
  復刻版
昭和三十九年九月十九日印刷
昭和三十九年九月二十五日発行
             定価七〇〇
    東京都世田谷区松原町二の七七一
著  者   岡野直七郎
発行者    伊藤幸子

発行所     
    東京都練馬区中村北四ノ一五
発行所   新星書房

 
   昭和三十五年

   家ごもり新年


目の覚めて窓をあくれば雨降れり珍らしき雨のけふの新年
歌集「谷川」
昭和三年八月十五日印刷
昭和三年八月二十日発行

    定價 壹圓八拾銭
  東京市外渋谷町北谷四十六番地
著作兼発行者 
岡野直七郎

  東京市芝區兼房町十五番地
印刷者 
 一 噌 連

東京市芝區兼房町十五番地
印刷所 
 一噌印刷所 

発行所
東京市外渋谷町北谷四十六番地
        
蒼 穹 社

添付されていた写真
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音立てて
  ながるる水の
    すがしさは
 そのみなもとへ
     つひにかへ
        らず


読み進んでいたら
 旅を恋うの中に

美作(みまさか)の山の奥なる岩の湯にひとり浸らばわが足(た)らはむか

という歌がありました。私にはこれが奥津温泉に思えてならないのです、それも般若寺温泉ではないかと思うのですが。
 何となく、わくわくしながら進んでいくと・・・奥津温泉が出てきました。

 山峡の朝
    美作奥津にて  

夜もすがら枕の下(もと)にひびきける山谷川(やまだにがわ)を朝覚めて見つ

(きぞ)の夜に音のみ聞きし谷川を朝目に見れば青く激(たぎ)つも

山はまだ春寒ながらまはだかに川の湯壺にひたる人あり

谷深き川の底より湯の湧くか湯けむりのぼるそこにまたここに

ひんがしは何方
(いづち)と見れば背面(そがひ)なる松山のうへのむらさきの空

奥山よ日出づる前のしづもりに靄たちこめて谷も尾もなし

あかときの空をかぎれる山々は鋸
(のこぎり)がたに起き伏しにけり

(とほ)つ嶺(ね)はうすみづいろに近山はもえぎのいろの朝明けむとす

おのづからひんがし空に茜さし山の裏べを日はのぼるらし

朝の日のいづるけはひに山谷をこめたる靄ぞ紅
(あけ)にうつろふ

(はざま)にはいまだ照らぬに西つかた山脈(やまなみ)の秀(ほ)は朝日あたれり

朝雲のたなびく山にたちまちにさしおよびたる光は遠し

   大釣峡にて

下り立ちぬ松の落葉のこまごまとつみて乾ける荒岩のへに

山川は岩のまほらにたゆたひて青さも青き大淵
(ひろぶち)をなす

谷ぞこゆただにそばだつ繁山
(しげやま)の峰すれずれに白き雲とぶ

山と山の間
(あひだ)に狭きあをぞらをゆく雲迅(はや)し吹きさやぐ風

おしなべて風にもまるる木のなかにはつはつ白し辛夷
(こぶし)の花は

國高く登り來にけり葉ごもりに深山
(みやま)うぐひすしき鳴くきこゆ

蒼穹門下の方々によって建てられ昭和50年6月2日に序幕された歌碑は「石庭にある

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